この記事は中小企業のAI導入は何から始めるべきかの各論です。最初の業務の選び方は、そちらで扱っています。

結論:AIには「整理」だけを任せ、照合は人がやる

生成AIで議事録を作るなら、AIに任せるのは発言の整理だけにして、数字と固有名詞の照合は担当者がやります。 手順は「文字起こし → 伏せる → 整理させる → 照合する → 配る」の5つです。

議事録は、AI導入の最初の業務に向いています。毎週発生し、完成形(決定事項・宿題・日付)が決まっていて、配る前に人が直せるからです。一方で、会議には取引先名や金額が必ず出ます。何も考えずに全文を貼ると、入力してはいけない情報まで渡すことになります。この記事では、その線引きも含めて手順を示します。

生成AIで議事録を作る手順は?5つのステップ

生成AIで議事録を作る流れ。人が伏せる、AIが整理する、人が照合して配る
AIが担うのは真ん中の整理だけです。前後の工程は人がやります。
  1. 文字起こしを用意する:オンライン会議の文字起こし機能や録音アプリでテキストにします。録音とAIでの整理をすることは、会議の最初に参加者へ伝えます。
  2. 伏せる:個人名、取引先名、未公開の金額を「A社」「担当B」「金額X」のように置き換えます。置き換えの対応表は手元に残します。
  3. 整理させる:後述のプロンプトに、伏せたテキストを貼って実行します。
  4. 照合する:数字・日付・固有名詞・決定事項を、文字起こしの原文と突き合わせます。対応表を使って名前を元に戻します。
  5. 配る:出席者に送り、訂正があれば24時間以内に返してもらいます。

最初の数回は時間がかかります。プロンプトと対応表を使い回すうちに、手順2〜4は短くなります。

議事録でAIに入力してはいけない情報はどこまでか?

線引きは、社内ルールの「入力してはいけない情報」と同じです。議事録で特に出やすいものを表にします。

情報 扱い 置き換えの例
顧客・取引先の個人名、連絡先 入力しない 担当A、担当B
取引先の社名 伏せる A社、B社
未公開の金額・契約条件 伏せる 金額X、条件Y
人事・評価・健康に関する発言 その部分を削る (削除)
社内の担当者名 社内ルールに従う 営業担当、制作担当

個人情報保護委員会は、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法に違反する可能性があると注意喚起しています。そうした入力をするなら、サービス事業者が機械学習に使わないことなどを十分に確認するよう求めています(個人情報保護委員会、2026-09-23取得)。迷ったら伏せる。 議事録の整理には、実名がなくても困りません。

社内ルールがまだない場合は、先に生成AIの社内ルール:中小企業向けの最小テンプレートで3項目だけ決めておくと、担当者が現場で迷いません。

そのまま使える議事録プロンプト

次の型を使います。[ ]の中を書き換えて、伏せたテキストの前に置きます。

あなたは会議の記録係です。下の文字起こしから議事録を作ってください。

# 会議の情報
- 会議名:[定例/打ち合わせの名前]
- 日時:[YYYY-MM-DD]
- 出席者:[担当A、担当B、営業担当]

# 出力の形式
1. 決定事項(箇条書き。決まったことだけ)
2. 宿題(「誰が・何を・いつまでに」の表)
3. 保留・次回に持ち越す論点
4. 議論の要点(議題ごとに3行以内)

# 守ること
- 文字起こしにないことは書かない。推測で補わない
- 数字・日付・固有名詞は原文のまま書き、言い換えない
- 聞き取れない、または発言者が不明な箇所は「【要確認】」と書く
- 相づち、言い直し、雑談は省く
- です・ます調で書く

# 文字起こし
[ここに伏せたテキストを貼る]

効いているのは「守ること」の3行です。推測で補わない、数字を言い換えない、不明は【要確認】と書く。 この3つがないと、AIは話の流れから「ありそうな決定事項」や「それらしい期限」を書き足します。

議事録プロンプトの「守ること」の有無による違い。推測で補うか書かないか、数字を言い換えるか原文のままか、不明を埋めるか要確認と書くか
3行の指示で、AIが話を補う余地を減らします。

AIが作った議事録は、どこを確かめるべきか

AIの出力は、読みやすいほど正しく見えます。照合する箇所を決めておき、全文を読み直すのではなく、次の4点だけを原文と突き合わせます。

確かめる点 起きやすい間違い
数字・日付 桁や曜日のずれ、「来週」を別の日付に置き換える
固有名詞 聞き取り違いの社名・商品名がそのまま残る
決定と保留の区別 「検討します」が決定事項に入る
宿題の担当と期限 発言していない人が担当になる、期限が補われる

総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」も、AIを業務で使う側に、出力の精度とリスクの程度を理解し、リスク要因を確認したうえで使うことを求めています(総務省・経済産業省、2026-09-23取得)。議事録でいえば、この4点の照合がそれにあたります。照合を省いた議事録は、配らない。 これだけは例外を作りません。

議事録をAIで作ると、どのくらい時間が減るのか?

減る時間は、会議の長さと、今どれだけ手で清書しているかで決まります。自社で測るなら、2週間だけ「AIなし」と「AIあり」の作業時間を記録して比べます。

測り方と、月あたりの時間への直し方はAIで減らせる作業時間の計算方法にまとめています。比べるのは作成時間だけでなく、配ったあとの訂正の回数も 入れると、照合の手順が守られているかも同時に分かります。

議事録AIを社内で定着させる方法

担当者1人で始め、うまくいったら広げます。広げるときに決めておくことは3つです。

プロンプトは共有フォルダに1つだけ置き、改善したらそこを更新します。人ごとに別のプロンプトを使うと、議事録の形が揃わなくなります。

よくある質問

無料のAIツールで議事録を作ってもいいですか

社内ルールで使っていいツールに入っていれば使えます。ただし、無料プランは入力内容の扱いが有料・法人向けプランと異なることがあります。使う前に、入力内容が学習に使われるかどうかを、そのサービスの規約や設定画面で確認してください。

文字起こしの精度が低いと、議事録も使えませんか

使えます。プロンプトで「聞き取れない箇所は【要確認】と書く」と指示しておけば、怪しい箇所が目印付きで残ります。担当者はその箇所だけ録音を聞き直せば済みます。

取引先との会議でも使えますか

伏せる手順を守れば使えます。ただし、交渉中の条件や未公開の金額が中心の会議は、伏せる箇所が多すぎて整理の精度が落ちます。最初は社内の定例会議から始め、慣れてから広げるのが確実です。

議事録以外に、どの業務から始めればいいか分かりません

自社のどの業務に時間が流れているかを先に把握すると決めやすくなります。CoadexのAI活用セルフ診断で「社内の作業・AI活用」を選ぶと、作業時間の入力から削減余地の目安が出ます。

出典・参考資料