この記事は中小企業のAI導入の始め方の各論です。自社で始める場合の順番は、そちらで整理しています。
AI導入支援とは:業務を選び、試し、定着させるまでを手伝うサービス
AI導入支援とは、どの業務にAIを使うかを決め、小さく試し、社内で使い続けられる形にするまでを外部が手伝うサービスです。ツールを売ることより、「どの業務を、どの順番で、誰が確かめながら変えるか」を決めることが中心です。
国の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、事業活動でAIを使う会社を「AI利用者」と呼び、提供者が意図した適正な使い方をし、正常に動かし続ける役割を担うとしています(総務省・経済産業省、2026-09-30取得)。支援を頼んでも、使う責任は自社に残ります。 だから、支援の終わりに社内で回せる状態になっているかが、依頼先を選ぶいちばんの基準です。
AI導入支援で依頼できる範囲は?4つの工程
依頼先によって呼び方は違いますが、中身はおおむね次の4つの工程に分かれます。
| 工程 | 内容 | 成果物の例 |
|---|---|---|
| 業務の棚卸し | 作業と時間を書き出し、AIに向く業務を選ぶ | 業務の一覧と、始める業務1つ |
| 試行 | 選んだ業務で、2〜4週間ほど実際に使ってみる | 使い方の手順と、減った時間の記録 |
| 仕組みづくり | プロンプトの型、社内ルール、ツールの設定を整える | 手順書、社内ルール、設定済みの環境 |
| 定着 | 社員への説明、使い方の相談、効果の確認 | 研修の資料、月1回の振り返り |

どこまで頼むかで、費用も期間も大きく変わります。「業務の棚卸しと試行だけ手伝ってもらい、仕組みづくりは社内でやる」という頼み方もできます。業務の選び方はAIで業務効率化する方法で詳しく扱っています。
AI導入費用はいくら?費用の目安と決まる条件
Coadexが診断ツールの費用比較で使っている目安は、業務コンサルやRPAベンダーに「AI導入と業務フローの設計」を頼む場合で、30〜150万円 です(2026年9月時点)。幅が広いのは、次の条件の組み合わせが会社ごとに違うからです。
| 条件 | 費用が抑えやすい | 費用が膨らみやすい |
|---|---|---|
| 対象の業務 | 1〜2業務に絞っている | 部署をまたいで複数の業務を変える |
| 使う道具 | ChatGPT などの既製のサービス | 社内システムとつなぐ、独自に開発する |
| データ | 社内の文書がそろっている | 紙や個人のフォルダに散らばっている |
| 社内の体制 | 試す担当者を決められる | 担当者がおらず、作業まで任せる |
ツールの利用料は、この目安とは別にかかります。ChatGPT を会社で使う場合のプランと料金はChatGPTの有料プラン比較にまとめました。
AI導入の費用を抑える頼み方
費用を抑えるには、最初の依頼を小さくします。
- 始める業務を1つに絞る:議事録、問い合わせの返信の下書きなど、毎週くり返す作業を1つ選びます。
- 既製のサービスで試す:開発は、試して効果が分かってからにします。
- 作業時間を先に測っておく:いまの時間が分かっていると、効果の確認が早く終わります。測り方はAIで減らせる作業時間の計算方法で紹介しています。
AI導入コンサルと、ツール会社・開発会社はどう違うのか
AI導入を手伝う会社は、大きく3つに分かれます。どれが良いかではなく、自社がいまどの段階にいるかで選びます。
| 依頼先 | 得意なこと | 向いている段階 |
|---|---|---|
| AI導入コンサル | 業務の選び方、進め方の設計、定着の支援 | 何から始めるか決まっていない |
| ツール・サービスの会社 | 自社製品の設定と使い方の説明 | 使うツールがもう決まっている |
| システム開発会社 | 社内システムとつなぐ、独自の仕組みを作る | 試して効果が確かめられた後 |
何から始めるか決まっていない段階で開発から入ると、使われない仕組みが残りがちです。失敗の典型はAI導入が失敗する会社の共通点で整理しています。
依頼する前に決める3つのこと
依頼先に同じ情報を渡すと、提案が比べやすくなり、余計な調査の費用も減ります。

- 目的を1つ:「問い合わせの返信にかかる時間を減らす」「採用を増やさずに受注を増やす」など。AIを使うこと自体は目的にしません。
- 対象の業務:最初に変える業務を1つ。候補が複数あれば、毎週くり返す時間の長いものから選びます。
- 社内の担当者:試す人と、結果を見て決める人。支援が終わった後に回す人でもあります。
あわせて、社員がAIに入れてよい情報の線引きも決めておきます。雛形は生成AIガイドラインの作り方にあります。
AI導入支援の選び方:確かめる質問
依頼先を比べるときは、次の質問を同じ文面で送ります。
- 最初の1〜2か月で、何を決めて、何を試すのか
- 効果を何の数字で確かめるのか(作業時間、件数など)
- 支援が終わったあと、社内で何ができる状態になるのか
- 社員が入力してよい情報の決め方を、一緒に考えてくれるか
- 途中で合わないと分かったとき、やめられる契約か
答えが具体的な依頼先ほど、進め方が決まっています。「AIで何でもできます」と範囲を決めない提案は避けます。
公的な相談窓口は使えるか
費用をかける前に、公的な窓口で相談する方法もあります。国が設置した「よろず支援拠点」は47都道府県にあり、経営上の相談に何度でも無料で応じています(中小企業基盤整備機構「よろず支援拠点」、2026-09-30取得)。何から始めるかを整理する段階なら、ここで相談してから依頼先を探す順番でも遅くありません。
よくある質問
AI導入支援は、どのくらいの期間がかかりますか
業務を1つに絞った場合、棚卸しから試行までで1〜2か月が一つの目安です。仕組みづくりと定着まで含めると、さらに数か月かかります。期間は、社内で試す人の時間をどれだけ取れるかで変わります。
AI導入コンサルに頼まず、自社だけで進められますか
進められます。始める業務を1つに絞り、既製のサービスで試し、作業時間を比べる、という順番は自社でもできます。判断に迷う点が出てきたときだけ相談する頼み方もあります。
補助金を使ってAI導入支援を頼めますか
制度によって、対象になる経費や申請の条件が違います。使えるかどうかは、各制度の公式サイトで最新の公募要領を確かめてください。補助金がなくても始められるよう、最初の依頼を小さくしておくと判断がしやすくなります。
自社の場合、何を頼めばいいか相談できますか
業務の内容と目的をうかがい、社内で進められる部分と、任せた方がよい部分を分けてお答えします。お問い合わせからご連絡ください。進め方はAI業務改善のサービスで紹介しています。先に効果の目安を知りたい場合は、AI活用セルフ診断も使えます。
出典・参考資料
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20260331_1.pdf(2026-09-30取得)
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「よろず支援拠点」 https://yorozu.smrj.go.jp/(2026-09-30取得)
- 株式会社Coadex「AI活用セルフ診断」の費用比較 https://coadex.online/diagnosis(2026年9月時点)



