この記事は中小企業のAI導入の始め方の各論です。AI導入を何から始めるかは、そちらで整理しています。
AIエージェントとは:目標に向けて、作業を自分で進めるAI
AIエージェントとは、目標を与えると、状況を読み取りながら手順を考え、道具を使って作業を進めるAIの仕組みです。1回の質問に1回答えて終わるのではなく、「調べる→まとめる→次の作業に渡す」のような複数の手順を続けて進めます。
国の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動する AI システム」と定義しています。ここでいう自律は、高度に自律した状態だけでなく、ある程度の自律性を持つものも含むとされています(総務省・経済産業省、2026-09-29取得)。
中小企業にとっての要点は、「AIにどこまで任せ、どこで人が確かめるか」を先に決めることです。 仕組みの新しさより、任せ方の設計で成果が決まります。
AIエージェントと生成AIの違いは?「作る」か「進める」か
生成AIは、指示に応じて文章や画像を作ります。AIエージェントは、生成AIを頭脳として使いながら、検索・ファイル操作・メール下書きなどの道具を組み合わせて、作業を最後まで進めます。
| 項目 | 生成AI | AIエージェント |
|---|---|---|
| 渡すもの | 1つの指示(プロンプト) | 目標と、使ってよい道具 |
| 返ってくるもの | 文章・画像などの成果物 | 作業の結果(下書きの作成、データの更新など) |
| 手順 | 人が1つずつ指示する | AIが手順を考えて続けて進める |
| 人の役割 | 出てきたものを確かめて使う | 任せる範囲を決め、要所で確かめる |

生成AIそのものの仕組みは生成AIとはで説明しています。AIエージェントは生成AIの上に作られることが多いため、生成AIの注意点(誤った内容を出すことがある、入力した情報の扱い)はそのまま当てはまります。
AIエージェントはどう動くのか:3つの動き
AIエージェントの動きは、大きく3つに分けられます。
- 読み取る:受け取った目標と、メール・ファイル・データベースなどの状況を読み取ります。
- 計画する:目標までの手順を考え、どの道具をどの順番で使うかを決めます。
- 実行して確かめる:道具を使って作業し、結果を見て、足りなければ次の手順に進みます。
ガイドラインでは、複数のAIエージェントが連携して意思決定し行動する仕組みを「エージェンティックAI」と呼んでいます。中小企業で最初に試すなら、1つのAIエージェントに1つの業務を任せる形から始めます。
中小企業でのAIエージェントの使いどころは?
向いているのは、手順が決まっていて、複数の道具をまたぐ作業です。次の表は、Coadexが業務を選ぶときに使っている見分け方にもとづく例です。
| 業務 | AIエージェントに任せる作業 | 人が確かめる場所 |
|---|---|---|
| 問い合わせ対応 | 内容の分類、過去の回答を探して返信の下書きを作る | 送信する前 |
| 見積もり・請求 | 受け取った書類から項目を読み取り、表に入力する | 金額と取引先 |
| 情報収集 | 決まったサイトや資料を調べ、要点を表にまとめる | 出典と数字 |
| 社内の資料作成 | 議事録やデータから、報告書の下書きを作る | 社外に出す前 |
向いていないのは、毎回判断の基準が変わる作業や、間違えたときに取り返せない作業です。業務の選び方の考え方は業務効率化をAIで進める方法で詳しく説明しています。
AIエージェント導入の順番:任せ方を3段階で広げる
AIエージェント導入は、いきなり全部を任せず、任せる範囲を段階で広げます。

- 提案だけ:AIエージェントは「次に何をすべきか」を示すだけで、作業は人が行います。
- 下書きまで:メールの下書きや表への入力までをAIエージェントが行い、人が確かめてから送る・確定します。
- 実行まで:決まった条件の作業に限って、AIエージェントが最後まで行います。結果は人が定期的に確かめます。
多くの会社は、2の「下書きまで」で十分に時間が減ります。3に進むのは、間違えても取り返せる作業に限ります。
AIエージェントを使うときの注意点とは
AIエージェントは作業を続けて進めるぶん、1つの間違いが次の作業に引き継がれやすくなります。次の3つを先に決めます。
- 人の判断を入れる場所:ガイドラインは、AIに単独で判断させるだけでなく、適切なタイミングで人間の判断を介在させる利用を検討するよう求めています。送信・支払い・削除の前は、必ず人が確かめます。
- 任せる道具と権限:メールを読むだけか、送れるのか。ファイルを見るだけか、消せるのか。できることを最小限にします。
- 入力してよい情報:顧客の個人情報や社外秘の資料を扱わせるかどうかを決めます。社内ルールの作り方は生成AIガイドラインの作り方にまとめています。
もう1つ、AIの出す結果を人がそのまま信じてしまうこと(自動化バイアス)にも注意します。ガイドラインも、AIの出力を人が鵜呑みにしないための対策を挙げています。
よくある質問
AIエージェントとChatGPTは同じものですか
同じではありません。ChatGPT は主に対話で答えや文章を作るサービスで、生成AIの一つです。AIエージェントは、生成AIを使いながら、手順を考えて作業を続けて進める仕組みを指します。対話型のサービスの中に、エージェントとして作業を進める機能が加わる例も増えています。
AIエージェントを導入するのに、プログラミングの知識は必要ですか
使うサービスによります。既存のサービスの機能として使う場合は、設定の画面で任せる作業を決められるものがあります。社内のシステムとつなぐ場合は、つなぎ方の設計が必要になります。まずは「下書きまで」の段階を、既存のサービスで試すのが現実的です。
AIエージェントとRPAの違いは何ですか
RPAは、人が決めた手順をそのとおりに繰り返す仕組みです。AIエージェントは、目標に向けて手順を自分で考えます。手順が完全に決まっている作業はRPA、書類の読み取りや文章の下書きのように判断が少し入る作業はAIエージェントが向いています。
自社のどの業務でAIエージェントを使えばいいか分かりません
CoadexのAI活用セルフ診断で業務の状況を選ぶと、AIで減らせる時間の目安が出ます。業務の選び方から任せ方の設計まで相談したい場合は、AIによる業務改善支援で進め方を紹介しています。
出典・参考資料
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20260331_1.pdf(2026-09-29取得)
- 総務省「生成AIの入門的な使い方と注意点 ver1.0」 https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/special/generativeai/data/file01.pdf(2026-09-29取得)



