この記事は中小企業のAI導入の始め方の各論です。生成AIそのものの意味は生成AIとはで扱い、この記事では会社で使うときの良い点と悪い点に絞ります。
生成AIのメリット・デメリットとは:時間は減るが、確認は残る
生成AIのメリットは、文書づくり・要約・下書きにかかる時間が減ること です。デメリットは、社内情報の漏洩、誤った回答、著作権の侵害という3つのリスクがあることです。
この2つは裏表です。時間が減るのは、AIが人の代わりに文章を作るからです。そして同じ理由で、AIが作った文章を人が確かめる手間は残ります。メリットだけを見て導入すると、確認の手間を見落とします。
生成AIのメリットは?会社で効果が出やすい3つ
国の調査で、企業が感じている効果ははっきりしています。
| メリット | 国の調査で分かること |
|---|---|
| 作業時間が減る | 生成AIの活用で生じうる影響として、日本の企業では「作業時間の短縮などによる業務の効率化」が61.6%で最も高い(総務省「令和8年版 情報通信白書」、2026-10-14取得) |
| 業務が速くなる | AIを導入した企業の効果は「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%で最も高い(IPA「DX動向・AI活用動向のポイント」、2026-10-14取得) |
| 企画や提案の質が上がる | 同じ調査で「企画提案等の品質や速さが向上した」が48.9%で2番目 |
利用も広がっています。自社の何らかの業務で生成AIを利用している日本の企業は86.4%でした(総務省「令和8年版 情報通信白書」、2026-10-14取得)。効果が出やすいのは、議事録やメールなど、毎日くり返す文章の仕事です。議事録で使う方法はAI議事録の作り方で紹介しています。
生成AIのデメリットは?企業が心配する順番
同じ白書で、企業に生成AIの懸念を尋ねた結果、日本で多かった順は次のとおりです(総務省「令和8年版 情報通信白書」懸念されるリスク、2026-10-14取得)。
- 社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある
- 出力結果の精度に問題がある
- 著作権等の権利を侵害する可能性がある
白書は、米国など他の3か国では「倫理上不適切な内容や偏見」と「プライバシーの侵害」の懸念が日本より高い傾向があったとしています。日本の会社が見落としやすいのは、この2つです。
もう1つのデメリットは、使い方が人任せになりやすいことです。IPAの調査では、生成AIの利用の形は「個人で業務利用している」が63.3%で最も高く、「部署の業務プロセスに組み込まれている」は11.9%にとどまりました(IPA「DX動向2026」、2026-10-14取得)。
生成AIのリスクとは:5つと、それぞれの対策
国のガイドラインと注意喚起をもとに、会社が押さえるリスクを5つに分けます。

| リスク | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 情報漏洩 | 社員が機密情報を、業務外の利用者向けの生成AIに入力してしまう | 会社が契約した業務向けのサービスだけを使う |
| 誤った回答 | 事実と異なることを、もっともらしく答える(ハルシネーション) | 数字・日付・固有名詞は、人が元の資料で確かめる |
| 著作権の侵害 | 既存の作品との類似性と依拠性があれば、侵害になりうる | 作品名や人の作風を指定して作らせない。公開前に似たものがないか確かめる |
| 個人情報 | 本人の同意なく個人データを入力すると、法律に違反する可能性がある | 個人名を伏せてから入力する。学習に使われない設定を確かめる |
| 偏り | 指示や学習データの偏りが、答えに出る | 採用や評価など、人を判断する用途には使わない |
出典は、情報漏洩・誤った回答・偏りが総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」の別添、著作権が文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」、個人情報が個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」です(いずれも2026-10-14取得)。
文化庁の考え方では、利用者が既存の作品を知らなくても、AIの学習データにその作品が含まれていれば、通常は依拠性があったと推認され、利用者の侵害になりうるとしています。「知らなかった」では済まないので、公開する画像や文章ほど確認が要ります。ChatGPTの学習設定はChatGPTに個人情報を学習させない設定で説明しています。
メリットが出る会社と出ない会社の違いは?
違いは、どの業務で何を減らすかを決めているかどうかです。
- 効果の種類が偏っている:IPAの調査では、AI導入の効果は「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%なのに対し、「売上や利益が向上した」は3.9%でした(IPA「DX動向・AI活用動向のポイント」)。売上を期待して入れると、期待外れになりやすいということです
- 会社の規模で差がある:同じ調査で、AIを導入している企業は1,001人以上で8割近く、101人以下では16.6%でした
- 方針の差:生成AIを活用する方針の企業の割合は、大企業74.0%に対し中小企業58.1%でした(総務省「令和8年版 情報通信白書」、2026-10-14取得)
Coadexの診断でも、最初に減らしたい業務と、今かかっている時間を入れてもらいます。どの時間を減らすかが決まると、効果を確かめられるからです。業務の選び方はAIで業務効率化する方法で扱っています。
デメリットを抑えて使い始める順番は?

- 業務を1つ決める:毎週くり返す文章の仕事から1つ選び、今かかっている時間を測ります
- ルールを3つ決める:入力してはいけない情報、人が確認する範囲、使ってよいツールの3つです。型は生成AIガイドラインの作り方にあります
- 少人数で試す:2〜3人で1か月使い、減った時間と困ったことを記録してから広げます
ルールは厳しすぎても逆効果です。IPAの手引書は、過度に厳格なルールは利用者の回避(シャドーAIの増加など)を招き、かえってリスクを高める可能性があると指摘しています(IPA「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」、2026-10-14取得)。禁止するより、使ってよい道具と範囲を示すほうが安全です。
よくある質問
生成AIのデメリットで、いちばん気をつけることは何ですか
社内情報の漏洩です。国の調査でも、日本の企業がいちばん心配しているリスクでした。会社が契約した業務向けのサービスだけを使い、顧客名や個人名は伏せてから入力するルールを先に決めます。
生成AIの回答はどこまで信用していいですか
下書きとして使い、そのまま外に出さないのが基本です。生成AIは事実と異なることを、もっともらしく答えることがあります。数字・日付・固有名詞・法律の内容は、人が元の資料で確かめます。
生成AIで作った文章や画像は、会社のものとして使えますか
使うこと自体はできますが、既存の作品に似ていないかを確かめます。似ていて依拠性が認められれば、著作権侵害になりえます。また、AIに簡単な指示を出しただけの生成物は、著作物と認められない場合があります。
生成AIのメリットが自社で出るか、どう確かめればいいですか
減らしたい業務と時間から確かめます。CoadexのAI活用セルフ診断で業務と今かかっている時間を入れると、AIで減らせる時間の目安が出ます。
出典・参考資料
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」生成AIの活用状況 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121130.html(2026-10-14取得)
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」懸念されるリスク及びリスク対策のための取組状況 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121140.html(2026-10-14取得)
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」生成AIの活用方針 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121110.html(2026-10-14取得)
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」生成AIの活用により生じうる影響 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121150.html(2026-10-14取得)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日)本編 https://www.soumu.go.jp/main_content/001064279.pdf(2026-10-14取得)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001064286.pdf(2026-10-14取得)
- 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日) https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf(2026-10-14取得)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日) https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/(2026-10-14取得)
- IPA「DX動向2026」(2026年7月30日) https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-2026.pdf(2026-10-14取得)
- IPA「DX動向・AI活用動向のポイント」(2026年7月16日) https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2026/rcu1hd0000016yh4-att/press20260716.pdf(2026-10-14取得)
- IPA「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」(2026年7月31日) https://www.ipa.go.jp/jinzai/ics/core_human_resource/final_project/2026/rcu1hd0000018kkn-att/rcu1hd0000019kwj.pdf(2026-10-14取得)



